これまでに、3回ほど、以上にえぐみが強いというか、雑味雑臭がきつく最後まで食べる気にならない蕎麦に遭遇している。
1回目は対馬在来を少量入手して、試験栽培した時のこと。自家用の野菜を栽培している菜園の空いている場所に播いたのだったが、これが背丈2mを越えた。どうも野菜を作っていた畑だったので残留窒素が思いのほか多く、結局は倒伏したのだったが、それでも何kgか収穫があったので、製粉して試食した。元来、対馬在来は苦味やえぐみの強い種類とは聞いていたが、強烈であった。苦味、えぐみだけならまだしも、匂いもきついので喉を通すのがつらい。結局、その後製粉して食べることはなかった。
2回目は昨年秋に収穫した徳島県の祖谷の北の方のK在来。知人の畑を借りて播種したのだったが、やはり残留窒素が多かったのか、この在来種が晩生型であるせいか、たまたま9月が高温続きとなったためか、花は咲いても実がつかない状況がずっと続き、10月に入って気がついたら霜にあい、それであわてて刈り取り作業をしたが、とても収量は少なかった。150坪くらいの面積で、かなり未熟な実まで含めて25kgくらい。
これを製粉して蕎麦にして試食してまた驚いた。苦い、渋い、どろ臭い(ソバ蜂蜜の匂い?)で、結局食べられる蕎麦にはならなかった。
3回目。隣県の名の知れた在来種の「サンプル粉」をいただいたので早速ソバに打って食べてみた。やはり、苦い、渋い、堆肥臭いで食べられない。
1回目,2回目の不味さの原因はおそらく窒素過多の畑で育ったことにあるのではないかと類推する。
つまり、そばのデンプン質は光合成作用により糖を生成し、さらにそれをデンプンにして実に蓄えられるのだが、タンパク質は根から吸収された硝酸態窒素をアンモニアに還元し、そのアンモニアをアミノ酸に換え、アミノ酸からタンパク質が作られる。
その際に、根から吸収された硝酸態窒素がすべてアンモニアからアミノ酸、タンパク質に変換されていった場合は風味の良いソバになるであろうが、たとえば土壌中に窒素が多くて過剰に吸収され還元されたアンモニアが硝酸態、あるいは亜硝酸態のままソバの実に移動することはないのだろうか。
倒伏するほど窒素を多く吸収したソバの実に、そういった未消化の硝酸態窒素や亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素などが移行,存在していたら、それらがえぐみや苦味,渋み、雑臭の原因になっているのではないか?
どこまでも、しろうとの怪しい推論にすぎません。
でも、新ソバではなくて,ある程度寝かされ、熟成されるとそれらがタンパク質に変わってえぐみが無くなり,おいしくなる。
ちょっと強引な推論でした。お後がよろしいようで……。
あ、3回目のサンプル粉については、もともと風味が強い在来種を、業務用の径が大きく重さもある電動石臼で丁寧に碾き、微粉に偏って歩留まりも高すぎたせいではないかと考えられます。