しろうとが、ああだこうだと、いろいろ愚行錯誤(!?)しております。

2011年11月24日木曜日

蕎麦について考え実行してみるひと

ソバの種を播くことから石臼による製粉、蕎麦打ちから食べるまでを一貫して探求されている先行者のブログを、三晩かけて全記事を読み通した。
種まきから蕎麦を打って食べるまでの全工程について考え実行されていて、参考になることばかりが書かれている。
私も、こんな風に、蕎麦について考え実行してみるひとになりたいと思う。

育種まで視野に入れた次年度の種の選別の仕方といい、蕎麦の香りへのこだわりといい、その涙ぐましい努力に敬服したが、自分のみょうちくりんに蕎麦狂いな姿も重ねて半ば同化し、身につまされながら読み進めた。
私も「風味」のある蕎麦を食べたいがために、あえて何ともバカバカしいソバの栽培を始め、親戚から古い石臼を奪取してモーターを着けたり、夏場に冷たくしめた蕎麦を食べようとして見事に失敗してずるずるな蕎麦玉をこっそり生ゴミ入れに棄てたりして、傍目には風車を敵と見紛って突撃するドン・キ・ホーテにしか見えない。

蕎麦の香りが甘皮にあることは知られている。
知られてはいるが、その部分の粉は歯ぬかりするという理由、あるいは粉にするのに時間がかかるという理由、あるいは粗碾きのままだとつながりにくく打ちにくいという理由などから、甘皮の相当部分は排除される。
私が初めてソバを栽培した年、製粉会社に製粉を委託した。この地では以前から個人の精米所やJAの精米所がソバの製粉もしていたのだが、その頃にはその数も減っていたし、私の舌に蕎麦の味を教え込んだ父親が製粉を委託していた個人の精米所は、あまりにあくどかった。
先ずは私の父が亡くなる何年か前のこと、その個人精米所に農家から買い求めた玄ソバを持ち込み、一週間後に製粉された粉を引き取りに行ったところ、「あれ、Kさん、もうそば粉持ち帰ったんじゃなかった。無いよ」と言われ、お人好しな父親はそのまま手ぶらで家に帰って来てしまったのだった。それでもうその精米所には行かないかと思ったら翌年、翌々年、父はまだその精米所に玄ソバを持ち込んでそば粉にしていた。
その父が病気になって歩行困難となった。そこで私が代わりになじみの農家から玄ソバを買い、その精米所に持ち込んだ。一週間後、そば粉を引き取りに行った私に、精米所のばあさんが言った。
「お宅のソバに釘が入っていて製粉機が傷んで部品を取り替えた。弁償して貰いたい」
私は製粉料金に部品代を上乗せされた料金を支払い、そば粉を自宅に持ち帰った。その年の蕎麦はちっともうまくなかった。今でもその精米所に石を投げたい気分です。
そういう苦い思い出があるので、その精米所には金輪際足を向けたくなかった。
そこで、この地で唯一の蕎麦専門の製粉会社に、生まれて初めて栽培したソバの製粉を委託した。そして生まれて初めて二八で蕎麦を打ってみたのだったが、どうもそば粉が白すぎるし粉の粒子が細かすぎるような気がした。初めてにしては結構うまくつながって蕎麦にはなったのだったが、食べてみるとどうにも蕎麦の「風味」が薄くてがっかりした。
どうしてこんなに「風味」が薄くなってしまったのかとずっと考えていて、玄ソバのせいというより、製粉の仕方に原因があるのではないかと思い至った。
それからいろいろ、ソバや蕎麦について書かれた本を読み、また考えた。
これは邪推かもしれないが、プロの製粉会社は「お宅で碾いてもらったそば粉はつながらない」と言われては困るので、篩いを細かい目にする。メッシュの細かいソバ粉がつながりやすく、粗碾きがつながりにくいのは事実である。
そこで製粉会社はメッシュを細かくする。メッシュを細かくすると、内層粉や中層粉はまだしも固い甘皮の部分が残る。固い甘皮を細かいメッシュの篩いを通るようにするにはさらに製粉機なり電動石臼なりにかけなくてはならない。安い(高い?)製粉委託料金でそこまで丁寧に碾いてはいられないので、甘皮部分は歯ぬかりもする厄介な部分なので棄ててしまうか、乾麺製造会社に売り飛ばしてしまう。その結果、打ちやすくて、色が白くて、品のいい蕎麦が打てるソバ粉が出来上がる。
しかし、かんじんの「風味」がどこかに消えてしまって、われわれの目の前にあるのは、香りも味も希薄だけれどコシやのど越しだけは良いという、いわば畸形な蕎麦。
コシやのど越しといった触感的食感だけだったら蕎麦よりもうどんの方がずっと優れている。蕎麦にはコシやのど越しだけでなく風味、すなわち「香り」と「味」をもバランスよく含め、味覚、嗅覚まで総動員して食べるべき食べ物なのである。

こんなことを考えた私は、次の年から、自分で栽培したソバは自分で自分の口に合うように製粉しなければダメなのだと思い、製粉機や石臼の取得に躍起になったのでした。
にもかかわらず、いまだに自分の気に入ったソバ栽培も製粉も出来ず、コシもあってのど越しも良く香りも味もある蕎麦を打てないでいるのですが。

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